脅威エクスポージャーリスク:技術リスク × ビジネスリスクの統合評価

PentaTrail編集部···5分で読める
目次

CVSS 10.0 の脆弱性が非公開のテスト環境にあるのと、CVSS 6.0 の脆弱性が顧客データを扱う本番システムにあるのとでは、実害に近いのは後者です。技術的な深刻さと、事業への響き方は別々に動きます。

脅威エクスポージャーリスク(TER)は、その2つを1つの表で交差させて、S から D までの5段階のバンドに落とす仕組みです。

01 / TER は、技術側のランクと資産の重さを交差させたバンド

縦に脅威ディスカバリレベル(TDL)を、横にビジネスインパクト(BI)スコアを置いた3×3の表で決まります。最も重い S になるのは、TDL が上位2つで、なおかつ BI が高い資産に乗っているときだけです。

TDLとBIスコアを交差させてTERバンドを決める3かける3の表。TDL5とTDL4の行はBI低でB、BI中でA、BI高でS。TDL3とTDL2の行はC、B、A。TDL1の行はD、C、B

図1:縦に技術側のランク、横に資産の重さを取った表

深掘り:情報レベルの所見はバンドを持たない

スキャナが info と申告した所見は、この表を通らずにバンドが空のまま残ります。順位付けの対象から外れるので、対応期限も付きません。件数の集計からも外れるため、情報レベルの所見が大量に出ても、バンドの分布は動きません。

02 / バンドが決まると、発見日から数える対応期限も決まる

S から D のそれぞれに日数が紐づいていて、その脆弱性を最初に見つけた日から数えます。過ぎたものは期限超過として別勘定になります。

バンドごとの対応期限を並べた図。Sは7日、Aは14日、Bは21日、Cは28日、Dは35日で、いずれも発見日から数える

図2:バンドごとの日数(発見日から数える)

深掘り:バンドが動けば期限も動く

期限はバンドに紐づいているため、資産にタグを付けて BI が上がれば、同じ脆弱性の期限は短いほうへ動きます。逆に能動的に確かめて再現しなかった所見は TDL が1段階下がるので、バンドが軽くなって期限も延びる側です。日付そのものを手で編集する場面はありません。

03 / TER マップは、その2軸をそのまま散布図にしたもの

表で決まる仕組みが分かっても、いま何件どこに溜まっているかは別の話です。同じ2軸を散布図にして、ドット1つを1件の所見として置いたものが TER マップです。

Executive Dashboard の TER マップ。ミニマップ、バンド分布バー、KEV 件数、AI ディープスキャン検証状況、AI 生成インサイトが並ぶ

図3:ダッシュボードに出る TER マップ(横軸が BI、縦軸が実効 TDL)

深掘り:どこに溜まっているかで読み方が変わる

右上に密集していれば、重要な資産に深刻な脅威が集まっていて、手を付ける場所がすぐ分かります。広く散っていれば、効くのは体系的な底上げのほうです。左下に偏っていれば、残っているのは軽い所見だけという読み方になります。

TER マップを拡大した散布図。BI スコア(横軸 3〜13)と脅威ディスカバリレベル(縦軸)の matrix にバンド色のドットが分布、右上ほど S バンドに、左下ほど D バンドに集まる

ドットにカーソルを合わせると、その所見の CVE、対象の FQDN、BI スコア、実効 TDL、バンド、担当グループ、アセットタグが出る仕組みです。全体の偏りを見てから、1件ずつへ降りられます。

TER マップのドットを hover した tooltip。CVE / アセット FQDN / BI / 実効 TDL / バンド / Evidence Grade / 担当グループ / アセットタグが表示される

04 / TER が受け持つのは、CTEM の5工程のうち優先順位付け

対象を決めて、見つけて、順番を付けて、確かめて、動かすという流れです。TER はその3番目にあたり、前の工程が集めた材料を受け取って順番だけを出します。

CTEMの5工程とTERの位置を示した図。1が対象を決める、2が見つける、3が順番を付けるでここにTERが当たり、4が確かめる、5が動かす

図4:TER が担うのは3番目の工程

深掘り:前後の工程がバンドを動かす

対象を決める工程で付けた資産のタグが BI スコアになり、見つける工程で取れた CVSS と EPSS が TDL になります。確かめる工程の結果も TDL へ戻ってくるため、バンドは一度決まったら固定ではありません。工程が一巡するたびに引き直しが走ります。全体像はCTEM とはで扱いました。

05 / 技術と事業が、同じ1つの言葉でリスクを話せるようになる

バンドの件数と前週比があれば、専門用語なしで状況を渡せます。「S が3件あり、すべて基幹の EC に集中しています」の一言で、報告を受ける側にも手を打つ先が伝わるはずです。

報告に載せる3つの数字を並べた図。SとAの件数、前週との差、KEVに該当する件数の3つで、専門用語を出さずに状況を伝えられる

図5:報告に載せる3つの数字

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付録:バンドの一覧と、マップの軸

表1:TER バンドと対応期限

バンド 対応期限(発見日から) 典型的な中身
S 7 日 高 BI の資産に乗った、上位2つの TDL
A 14 日 高 BI の中位 TDL、または中 BI の上位 TDL
B 21 日 低 BI の上位 TDL、中 BI の中位 TDL、高 BI の TDL1
C 28 日 低 BI の中位 TDL、または中 BI の TDL1
D 35 日 低 BI の TDL1
(なし) 期限なし 情報レベルの所見

表2:TDL と BI からバンドを決める表

TDL \ BI 5(低) 6〜10(中) 11〜13(高)
TDL5・TDL4 B A S
TDL3・TDL2 C B A
TDL1 D C B

表3:TER マップの軸

意味
横軸 BI スコア(5〜13、右へ行くほど重要な資産)
縦軸 実効 TDL(TDL1〜TDL5、上へ行くほど深刻)
TER バンド(S/A/B/C/D、色覚多様性に配慮)

TDL の決まり方は脅威ディスカバリレベル(TDL)とは、BI の決まり方はビジネスインパクト(BI)スコアとはが扱っています。

本文と表の値は、2026年8月17日に PentaTrail の算出処理そのもの(asm_get_bandasm_finding_sla_days)を参照して確認したものです。

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