脅威ディスカバリレベル(TDL)とは:CVSS × EPSS による脆弱性ランク付け

PentaTrail編集部···6分で読める
目次

公開された脆弱性のうち、ある30日間に悪用の動きが見えるのは1.5〜3%にとどまります(FIRST の観測)。深刻度の高い順に並べるだけでは、狙われないものから順に手を付けることになりかねません。

脅威ディスカバリレベル(TDL)は、深刻度と悪用確率を掛け合わせて5段階に畳み、そこへ根拠の質と検証の結果を反映させた、PentaTrail の技術側のランクです。

01 / TDL は、深刻さと悪用確率の組み合わせを5段階に畳んだもの

CVSS の帯と、EPSS が0.1以上かどうかの2つで決まります。同じ CVSS でも、悪用確率が0.1を超えれば1段階上のランクです。

CVSSの帯とEPSSが0.1以上かどうかでベースのTDLが決まる格子の図。CVSS9以上はEPSS0.1以上でTDL5、未満でTDL4。CVSS7から9はTDL4とTDL3。CVSS4から7はTDL3とTDL2。CVSS4未満はTDL2とTDL1

図1:ベースの TDL を決める格子(TDL5 が最も重く、TDL1 が最も軽い)

深掘り:どちらのスコアも付いていないとき

CVSS も EPSS も無い所見は、スキャナが申告した深刻度から決めます。critical なら TDL4、high なら TDL3、medium なら TDL2、それ以外は TDL1です。深刻度が info の所見はこの格子を通らず、順位付けの対象から外れます。

02 / ベースの TDL に3つの補正を当てて、実効の TDL が決まる

画面に出るのはベースそのままではなく、根拠の質・検証の結果・悪用の実績を反映した実効の TDL です。下げる向きが2つ、上げる向きが1つあります。

ベースのTDLに3つの補正を当てて実効のTDLを出す図。根拠が弱ければ最大3段階下げ、能動的に確かめて未確認なら1段階下げ、KEVに掲載されていれば1段階上げる

図2:下げる補正が2つ、上げる補正が1つ

深掘り:2つの下げは、同時には効かない

根拠の弱さと、検証で届かなかったことは別のものを見ています。前者はその所見をどれだけ確からしく検出できたか、後者は実際に外から触って確かめられたかです。ただし能動的に確かめた所見は、確かめたという事実そのものが裏付けになるので、その時点で最上位の A として扱われます。つまり検証ぶんの1段階が効くときは裏付けの下げ幅がゼロで、裏付けの弱さで3段階下がるのは、まだ確かめていない所見のほうです。

03 / 根拠が弱い所見は、最大3段階まで下がる

検出の裏付けの強さを A から D の4段階で評価し、弱いほど大きく下げます。能動検証で確認済みなら下げ幅ゼロ、外部の CVE 情報だけが根拠なら3段階です。

検出の裏付けの強さと下げ幅を並べた図。Aは下げ幅0でディープスキャン系のツールや能動的に確かめた所見、Bは1段階で手元のスキャンや配布元の勧告、Cは2段階で既定、Dは3段階で外部のCVE情報のみ

図3:裏付けの強さと、下げ幅の対応

深掘り:D になるのは、版を戻す配布物のホストに限る

外部の CVE 情報だけが根拠でも、それだけで D にはなりません。修正だけを古い版へ取り込む配布形態のホスト(Debian・Ubuntu・RHEL 系など)で、版の数字を見ただけでは直っているか分からない場合に D になります。版の数字がそのまま使える製品なら、外部情報だけでも A の扱いです。

04 / 確かめて届かなかったら1段階下げ、悪用の実績があれば1段階上げる

能動的にスキャンして再現しなかった所見は、外から到達できないか既に直っている見込みが高いと判断します。逆に実際の攻撃で使われた実績があるものは、順番を前へ倒します。

検証の結果と悪用の実績による補正の図。能動的に確かめて再現しなかった所見は1段階下げ、KEVカタログに載っている脆弱性は1段階上げる

図4:確かめた結果と、悪用の実績で動く向き

深掘り:確認できなかった所見を消さない理由

再現しなかったことは、存在しないことの証明にはなりません。スキャンの経路が塞がれていただけかもしれず、資格情報が要る画面の奥にあるのかもしれません。だから一覧から消さずに、順番だけを1つ下げて残します。詳しくはAIで脆弱性を検証するにあります。

05 / 補正には順序があり、下げは TDL1 で頭打ち、上げは TDL5 で止まる

下げを先に足して頭打ちにしたうえで、悪用の実績が1つ分を戻す順序です。下げ切って TDL1 に沈んだ所見でも、KEV に載っていれば TDL2 まで戻ってきます。

補正を当てる順序の図。ベースのランクに根拠の弱さと未確認の下げを足し、TDL1で頭打ちにしたうえで、KEV掲載なら1段階戻し、TDL5を上限とする

図5:下げを先に頭打ちにしてから、上げを当てる

深掘り:順序が結果を変える場面

分かりやすいのは、CVSS 5.0 で外部の CVE 情報だけが根拠の所見です。ベースは TDL2 で、裏付けの弱さで3段階下げると計算上は TDL1 より下へ行きますが、そこで頭打ちになって TDL1 に止まります。そのうえで KEV 掲載の1段階上げが当たるので、最終的には TDL2 です。頭打ちを下げ側にだけ当てているので、下げが何段階積もっていても KEV の1段階は必ず効きます。

06 / TDL は技術側の軸で、資産の重さと掛け合わせて TER になる

TDL だけでは、その脆弱性がどのシステムに乗っているかを見ていません。ビジネスインパクト(BI)スコアと掛け合わせて、はじめて対応の順番になります。

TDLとBIスコアを掛け合わせてTERバンドになる図。技術側の軸であるTDLと、事業側の軸であるBIスコアを組み合わせ、SからDの5段階のTERバンドを出す

図6:技術側の軸と事業側の軸を掛け合わせて、対応の順番にする

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付録:決定表と、実効ランクの求め方

表1:ベース TDL の決定表

条件 TDL
CVSS ≥ 9 かつ EPSS ≥ 0.1 TDL5
CVSS ≥ 9 TDL4
CVSS ≥ 7 かつ EPSS ≥ 0.1 TDL4
CVSS ≥ 7 TDL3
CVSS ≥ 4 かつ EPSS ≥ 0.1 TDL3
CVSS ≥ 4 TDL2
EPSS ≥ 0.1 TDL2
その他 TDL1

表2:CVSS も EPSS も無いときの読み替え

スキャナの深刻度 TDL
critical TDL4
high TDL3
medium TDL2
その他 TDL1
info 順位付けの対象外

表3:裏付けの強さと下げ幅

裏付け 下げ幅 主な根拠
A 0 段階 ディープスキャン系のツールで検出、または能動的に確かめた所見(再現しなかった場合を含む)
B 1 段階 手元のスキャン、または配布元の勧告
C 2 段階 上のどれにも当たらない場合の既定
D 3 段階 外部の CVE 情報のみ、かつ版を戻す配布物のホスト

表4:実効のランクを求める順序

やること
1 ベースのランクに、裏付けの下げ幅と未確認の1段階を足す
2 TDL1 で頭打ちにする
3 KEV 掲載なら1段階戻す
4 TDL5 を上限とする

深刻度が info の所見は、この順序を通らずに対象外のまま残ります。

本文と表の値は、2026年8月17日に PentaTrail の算出処理そのもの(asm_calc_priorityasm_recalc_confidence)を参照して確認したものです。

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