公開された脆弱性のうち、ある30日間に悪用の動きが見えるのは1.5〜3%にとどまります(FIRST の観測)。深刻度の高い順に並べるだけでは、狙われないものから順に手を付けることになりかねません。
脅威ディスカバリレベル(TDL)は、深刻度と悪用確率を掛け合わせて5段階に畳み、そこへ根拠の質と検証の結果を反映させた、PentaTrail の技術側のランクです。
01 / TDL は、深刻さと悪用確率の組み合わせを5段階に畳んだもの
CVSS の帯と、EPSS が0.1以上かどうかの2つで決まります。同じ CVSS でも、悪用確率が0.1を超えれば1段階上のランクです。

図1:ベースの TDL を決める格子(TDL5 が最も重く、TDL1 が最も軽い)
深掘り:どちらのスコアも付いていないとき
CVSS も EPSS も無い所見は、スキャナが申告した深刻度から決めます。critical なら TDL4、high なら TDL3、medium なら TDL2、それ以外は TDL1です。深刻度が info の所見はこの格子を通らず、順位付けの対象から外れます。
02 / ベースの TDL に3つの補正を当てて、実効の TDL が決まる
画面に出るのはベースそのままではなく、根拠の質・検証の結果・悪用の実績を反映した実効の TDL です。下げる向きが2つ、上げる向きが1つあります。

図2:下げる補正が2つ、上げる補正が1つ
深掘り:2つの下げは、同時には効かない
根拠の弱さと、検証で届かなかったことは別のものを見ています。前者はその所見をどれだけ確からしく検出できたか、後者は実際に外から触って確かめられたかです。ただし能動的に確かめた所見は、確かめたという事実そのものが裏付けになるので、その時点で最上位の A として扱われます。つまり検証ぶんの1段階が効くときは裏付けの下げ幅がゼロで、裏付けの弱さで3段階下がるのは、まだ確かめていない所見のほうです。
03 / 根拠が弱い所見は、最大3段階まで下がる
検出の裏付けの強さを A から D の4段階で評価し、弱いほど大きく下げます。能動検証で確認済みなら下げ幅ゼロ、外部の CVE 情報だけが根拠なら3段階です。

図3:裏付けの強さと、下げ幅の対応
深掘り:D になるのは、版を戻す配布物のホストに限る
外部の CVE 情報だけが根拠でも、それだけで D にはなりません。修正だけを古い版へ取り込む配布形態のホスト(Debian・Ubuntu・RHEL 系など)で、版の数字を見ただけでは直っているか分からない場合に D になります。版の数字がそのまま使える製品なら、外部情報だけでも A の扱いです。
04 / 確かめて届かなかったら1段階下げ、悪用の実績があれば1段階上げる
能動的にスキャンして再現しなかった所見は、外から到達できないか既に直っている見込みが高いと判断します。逆に実際の攻撃で使われた実績があるものは、順番を前へ倒します。

図4:確かめた結果と、悪用の実績で動く向き
深掘り:確認できなかった所見を消さない理由
再現しなかったことは、存在しないことの証明にはなりません。スキャンの経路が塞がれていただけかもしれず、資格情報が要る画面の奥にあるのかもしれません。だから一覧から消さずに、順番だけを1つ下げて残します。詳しくはAIで脆弱性を検証するにあります。
05 / 補正には順序があり、下げは TDL1 で頭打ち、上げは TDL5 で止まる
下げを先に足して頭打ちにしたうえで、悪用の実績が1つ分を戻す順序です。下げ切って TDL1 に沈んだ所見でも、KEV に載っていれば TDL2 まで戻ってきます。

図5:下げを先に頭打ちにしてから、上げを当てる
深掘り:順序が結果を変える場面
分かりやすいのは、CVSS 5.0 で外部の CVE 情報だけが根拠の所見です。ベースは TDL2 で、裏付けの弱さで3段階下げると計算上は TDL1 より下へ行きますが、そこで頭打ちになって TDL1 に止まります。そのうえで KEV 掲載の1段階上げが当たるので、最終的には TDL2 です。頭打ちを下げ側にだけ当てているので、下げが何段階積もっていても KEV の1段階は必ず効きます。
06 / TDL は技術側の軸で、資産の重さと掛け合わせて TER になる
TDL だけでは、その脆弱性がどのシステムに乗っているかを見ていません。ビジネスインパクト(BI)スコアと掛け合わせて、はじめて対応の順番になります。

図6:技術側の軸と事業側の軸を掛け合わせて、対応の順番にする
自社の脆弱性がどの TDL に落ちるかは、14日間無料で試せます。
付録:決定表と、実効ランクの求め方
表1:ベース TDL の決定表
| 条件 |
TDL |
| CVSS ≥ 9 かつ EPSS ≥ 0.1 |
TDL5 |
| CVSS ≥ 9 |
TDL4 |
| CVSS ≥ 7 かつ EPSS ≥ 0.1 |
TDL4 |
| CVSS ≥ 7 |
TDL3 |
| CVSS ≥ 4 かつ EPSS ≥ 0.1 |
TDL3 |
| CVSS ≥ 4 |
TDL2 |
| EPSS ≥ 0.1 |
TDL2 |
| その他 |
TDL1 |
表2:CVSS も EPSS も無いときの読み替え
| スキャナの深刻度 |
TDL |
| critical |
TDL4 |
| high |
TDL3 |
| medium |
TDL2 |
| その他 |
TDL1 |
| info |
順位付けの対象外 |
表3:裏付けの強さと下げ幅
| 裏付け |
下げ幅 |
主な根拠 |
| A |
0 段階 |
ディープスキャン系のツールで検出、または能動的に確かめた所見(再現しなかった場合を含む) |
| B |
1 段階 |
手元のスキャン、または配布元の勧告 |
| C |
2 段階 |
上のどれにも当たらない場合の既定 |
| D |
3 段階 |
外部の CVE 情報のみ、かつ版を戻す配布物のホスト |
表4:実効のランクを求める順序
| 順 |
やること |
| 1 |
ベースのランクに、裏付けの下げ幅と未確認の1段階を足す |
| 2 |
TDL1 で頭打ちにする |
| 3 |
KEV 掲載なら1段階戻す |
| 4 |
TDL5 を上限とする |
深刻度が info の所見は、この順序を通らずに対象外のまま残ります。
本文と表の値は、2026年8月17日に PentaTrail の算出処理そのもの(asm_calc_priority と asm_recalc_confidence)を参照して確認したものです。
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