委託先の管理機能の侵害で、なぜ不正取引が成立してしまうのか

委託先の管理機能を悪用され、顧客の口座で不正取引が成立しました。管理機能の侵害から顧客の資産を動かせてしまう設計を、発注側の要件定義から考えます。

岩井コスモ証券管理機能と取引権限の分離2026年10月の事案約2分で読めます出典・公表資料

委託先の管理機能を悪用され、顧客の取引が成立した

2026年10月14日、岩井コスモ証券のインターネット取引システムで不正アクセスが発生しました。7口座で顧客の意図しない売買注文が出され、5口座で約定しました。対象の顧客には同日中に連絡し、取引前の状態へ戻す措置が取られています。また、4,975人分の氏名やメールアドレスなどが漏えいしました。[1]

運用・保守の委託先であるトレードワークスが提供するシステムには、管理機能の設定不備がありました。攻撃者はその機能を悪用して不正取引を行いました。顧客向けのパスキー認証が突破されたものでも、漏えいした個人情報を使って注文されたものでもありません。[2][3][1]

入口を閉じるだけで、不正取引を防げるのか

悪用された管理機能は、本来は限定された環境からだけ使うべきものでしたが、外部から利用できる状態になっていました。トレードワークスは外部から利用できないよう修正し、接続元の制限や監視を強化しました。[2]

しかし、問われるのは入口の設定だけではありません。管理機能を悪用すると、なぜ顧客の注文を成立させるところまで操作できたのでしょうか。 正規にその機能を使える担当者による内部不正を、何が防ぐのかも考える必要があります。

具体的な権限構成や注文に至る処理は公表されていません。ただ、取引を動かせる経路の安全性を、接続元の制限や担当者への信頼だけに委ねることはできません。

管理担当者でも、顧客の資産を勝手に動かせない設計にする

システムの運用・保守を委託することと、顧客の資産を売買する権限を渡すことは別です。管理担当者が業務に必要な操作をできても、その権限だけで顧客の注文を作成・成立させられない設計が必要です。

顧客からの注文と社員が業務として入力する注文は、それぞれ誰の権限で、どのような依頼や承認に基づくものかを、注文を受け付ける側で検証します。その検証や設定を変更する権限も分け、一人の担当者が制限を外して発注まで完結できないようにします。

発注側は、委託先の管理機能で何ができ、その操作から不正注文が生じることを何が防ぐのかまで、要件定義と受入検証に含めるべきです。 顧客向けの認証を強化するだけでは、管理側からの不正操作までは防げません。

出典・公表資料

  1. [1]岩井コスモ証券「外部委託先への不正アクセスに伴うお客様情報の漏洩について(第2報)」(2026年10月20日)
  2. [2]トレードワークス「(開示事項の経過)当社が提供するシステムへの不正アクセスに関するお知らせ」(2026年10月23日開示)
  3. [3]岩井コスモ証券「不正アクセスによる個人情報漏洩および不正取引に関するご報告」(2026年10月21日)