AIで脆弱性を検証する:発見だけでは守れない

PentaTrail編集部···4分で読める
目次

脆弱性スキャナーは、毎週のように数百件の検出結果を出します。そのうち実際に攻撃者が悪用できるのはどれかという問いに、即答できるチームは多くありません。

見つけることと、本当に攻撃できるか確かめることは別の工程です。後者を担う AI ディープスキャンの考え方を順に見ていきます。

01 / 「見つける」と「攻撃できるか確かめる」は、別の工程

発見はポートやバナー、TLS 証明書、使用技術の推定から候補の一覧を作る工程です。候補はあくまで候補で、そこに実在の確認は含まれていません。

発見と検証を分けた図。発見は外からスキャンして脆弱性の候補一覧を作る工程、検証はその候補が本当に再現できるかを確かめる工程で、両者は別に置かれる

図1:候補を挙げる工程と、実在を確かめる工程

深掘り:枠組みの側でも分けてある

CTEM は5つの工程のうちに検証(Validation)を明確に置いています。発見した脆弱性が本当に悪用できるかを確かめないと、対応の順番が信頼できないからです。全体像はCTEM とはに、攻撃面の把握はASM の解説で扱いました。

02 / 発見の結果には、3 つの構造的な限界がある

外から見える情報だけで判断している以上、避けられない誤差があります。脆弱に見えても実際には塞がっている、という組み合わせが3通りあるからです。

発見の結果が持つ3つの限界の図。ヘッダやバナーから推定したバージョンが実際にはパッチ済みのことがある、手前のWAFなどで攻撃が遮断される構成なら実リスクは低い、初期設定では脆弱でも運用の設定変更で塞がれていることがある

図2:外から見えるだけでは決まらない 3 つの場合

深掘り:どれも「嘘の検出」ではない

スキャナが間違っているわけではなく、外から見える範囲では判断がつかない、というだけです。だから検出を消すのではなく、確かめる工程を足して切り分けます。

03 / 検証を飛ばすと、3 つの形で跳ね返る

未検証の一覧をそのまま渡すと、直す側にも報告する側にも負担が移ります。いちばん重いのは、アラート自体が信用されなくなることです。

検証を飛ばしたときに起きる3つの問題の図。実は影響のなかった修正作業が積み上がる、数百件の未検証のなかに本当に攻撃できるものが埋もれる、件数でしか報告できず判断に使えない

図3:検証を飛ばしたぶんが、あとから戻ってくる

深掘り:機械的な絞り込みだけでは足りない

EPSS や KEV で絞れば件数は減りますが、それは脆弱性そのものの性質を見た絞り込みです。「このシステムで本当に悪用できるか」は、その資産に対して確かめないと分かりません。スコアの読み分けはCVSS・EPSS・KEVで扱いました。

04 / 遠隔から、非破壊で、対象に合わせて確かめる

対象の文脈を踏まえて、AI がその脆弱性に特化した検証コードを作り、遠隔から実行します。データの変更や削除は行わず、結果は3つに分かれます。

AIディープスキャンの3つの結果の図。攻撃成立は検証で実際に再現できたもの、攻撃未成立は検証したが再現しなかったもの、検証不可は自動での確認が難しく手動確認が要るもの

図4:検証の結果は 3 つに分かれる

深掘り:全部を能動検証するわけではない

対象になるのは、能動的に再現できて、なおかつ優先度や根拠の確度が一定以上の脆弱性です。遠隔かつ非破壊という性質上、資格情報の先や破壊的な経路までは届きません。検証不可には、資格情報が要るもの、時間切れになったもの、実行そのものができなかったものが入ります。

有効にするかどうかを決めるのはお客様で、実行はいつでも一時停止と再開ができます。能動的に確かめる工程である以上、制御はこちらが握らない設計にしました。

05 / 検証の結果が、対応の順番を書き換える

確かめた事実は、そのまま順位付けへ戻る仕組みです。再現しなかったものはTDLが1段階下がり、一覧の下のほうへ移ります。

検証の結果が順位付けへ戻る図。攻撃成立と確かめたものから手を付け、再現しなかったものはTDLが1段階下がって経過観察へ回り、画面では攻撃成立で絞り込める

図5:確かめた事実を、順位付けへ戻す

深掘り:それでも一覧から消さない

再現しなかったことは、存在しないことの証明にはなりません。スキャンの経路が塞がれていただけかもしれないので、消さずに順番だけを下げて残します。順位付けの仕組みはTER バンドにあります。

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付録:検証の結果と、対象にする条件

表1:検証の結果

結果 中身 そのあと
攻撃成立 検証で実際に再現できた 優先して手を付ける
攻撃未成立 検証したが再現しなかった TDL が1段階下がり、経過観察へ
検証不可 資格情報が要る、時間切れ、実行できなかった 手動での確認へ回す

表2:能動検証の対象にする条件

条件 中身
能動的に再現できる型か 遠隔から非破壊で確かめられる種類の脆弱性であること
優先度が一定以上か 順位付けで上位に来ているもの
根拠の確度が一定以上か 検出の裏付けが弱すぎないもの
お客様が有効にしているか 実行はいつでも一時停止・再開できる

問うべきは脆弱性が何件あるかではなく、攻撃できる脆弱性がどこに何件あるかです。発見で候補を挙げ、検証で実在を確かめ、成立したものへ人手を寄せるのが、限られた手数での回し方になります。

検証の結果の区分は、2026年8月17日に PentaTrail のデータ定義を参照して確認したものです。

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